エピソード

小さな治療室だが、開業して30年以上が経った。治療してきた患者さんは何万人にもなっている。

印象的な臨床例も沢山あった。開業当初来院なさった患者さんも、もうすっかりご高齢になられた。

今も時々いらっしゃるが、かつて連れていらした小さかったお子さんたちが今では、立派なお父さんお母さんになって、更にそのお子さんたちが具合が悪いと一緒に連れてこられる。親子三代のおつきあいである。


私も開業したころは30手前だったが、もうすでに60の山をを越している。あと何年皆さんのお役に立てるだろう?などど、考えてしまうのである。

後継者の見込みのない私だが(息子は二人いるが別の道を歩んでいる。)

今のうちに思いついたことを書き残しておこうと思う。読んでくださる方々にも幾らかの参考になるかもしれない。


お付き合い頂けたら幸いだと思う。先に目次をお知らせしておく、興味のあるところを読んでほしい。先に言っておくが、かなりの乱筆乱文である事をご承知下さい。出来るだけ医学用語を避けてわかり易く書いてゆこうこうと思っています。


又、思いつき次第ぼちぼち加筆して行くつもりなので、時々見てみて頂きたい。


エピソード1 重度の肩こり、頭痛

エピソード2 脊柱管狭窄症と診断された人

エピソード3 めまい 

エピソード4 交通事故!

エピソード5 急性腰痛(ギックリ腰)

エピソード6  膝の痛み

エピソード7 胸や背中の痛み

エピソード8     足首捻挫

 








エピソード1

重度の肩凝り、頭痛


たかが肩凝り、とおっしゃる方もおられるでしょうが、

これが、頭痛を伴って酷く苦痛が続いてしまうなら仕事もままならないもの。

家庭生活も緊張したものになりがちとなってゆくものです。だって機嫌良くできないのですから。

経験した人にしかわからないのである。


どうしてこの症状を経験してしまう事になってしまったのでしょうか?

原因は多岐に渡ります。ごく小さな時のトラブルである場合もあれば、

学生時代の部活動や最近の事故によるもの、長期間の生活習慣や仕事のスタイル等様々で重複しあっている事もあり、この原因を探り出すことは治療以上に大切なことと言えるでしょう。


こんな事が解るのだろうか?

熟練したカイロプラクターにはそれが出来るのである。

問診し、触診しながら様々な検査を進めて行くうちに、幾つかの仮説が浮かんでくるもので、それに基づいて質問をしているうちに来院者の記憶していることや思い出したことなど、現在のライフスタイルの中に原因となる事が見えて来るものだ。

過去の事はもう経験しないから良しとして、現在の生活習慣の中に見直せるところを見出してそれに基づいたアドバイスをして協力を求める事は必要不可欠である。

家でくつろぐ時の姿勢や寝具、仕事場や家庭でのモバイル機器を使用する時の姿勢などが代表的なものとな

なって来る。


頚椎の矯正は古典的なカイロプラクティックと違い、現代では痛みやショックを患者に与えずに治療する方法を取っている。




現在の生活習慣の改善が出来れば、

通常3〜5回の治療で充分回復出来るものである。



エピソード2


脊柱管狭窄症と診断された人


ここ数年腰痛と左足の外側に痛みを抱える男性。

整形外科に行きレントゲン検査で脊柱管狭窄と診断されたが、

痛み止めと湿布を処方されるばかりで、数ヶ月経っても症状はひどくなるばかり、諦めて職場の近くのカイロプラクティックに通って半年。20回以上施術を受けたが、一向に改善が見られなかったと言う事だった。


そもそも脊柱管狭窄はレントゲンでは確認出来無いものであり、症状も典型症状の両足型の間欠性跛行(歩行していると両足に痺れが走り、座って休むと痺れが消失する症状)では無いし、MRI検査をしていないこの段階では、脊柱管狭窄かどうかは確認出来ていない筈である。


だろう診断である。この手の診断が余りにも多い、実際のところはMRIで確認しても整形外科で決め手となる治療は無いのである。外科手術で成功して効果が持続した症例もそれ程多くはないだろう。


だからといって、検査もしないでだろうで診断するのは如何なものだろうか?

要するに、レントゲン上では異常が見つからず(椎間が狭いとか骨に尖った所があるとか、これもあまり関係ないが )

ケチの付けようが無かったのだろう。結局は何も解らなかったのである。

こう言った診断を受けてきた人は珍しく無い。脊柱管狭窄では無いのにそう診断されている人が余りにも多いと言う事である。


この人が整形外科に見切りを着けた気持ちは解る。しかし、その次に選んだカイロプラクティックだが、ここも問題だった。いつも漫然と治療をしていつまでも次の予約を取りたがる、結局のところ20回以上通っても全く変化は無かったそうだ。

それでその人も色々検索して調べた結果、JAC(日本カイロプラクター協会)のホームページに行き着き、私の所に連絡をしていらしたのである。


カイロプラクティック検査の結果、脊柱管狭窄ではなく骨盤の問題と中臀筋、小臀筋の筋膜疼痛症候群による症状だった。

初回の段階で姿勢指導に従い、週一回ペースで治療すれば5〜6回で全快できると告げてから矯正に入った。初回の矯正終了後から暫く経験した事のなかったフィーリングがあったと喜んで帰宅された。その後、予定通り6回で全快された。

後日、その方は親しい友人を何人か紹介される事となった。




エピソード3

目眩


目眩の原因は多い、最も気をつけたいのは脳腫瘍などの前駆症状である。

命の危険に一番近い所から疑ってゆく。これは症状を鑑別してゆく上での鉄則である。

目眩で相談を受けた時は必ず脳神経外科の受診を勧めている。そこでシロだった場合は耳鼻科へ行ってもらう。メニエール検査である。それでも解らなかった場合のみ頚椎を疑って治療を引き受けている。


頚椎には両側に椎骨動脈が通っており、ひどい頚椎トラブルを起こすと一時的に循環不良を起こして目眩が生じ、ひどい場合は失神する事もある。


ある時、3人掛けのソファーに横に寝そべり、肘掛けを枕にして首を屈曲させてテレビを見ていた時に玄関のベルが鳴り、首を屈曲した状態から跳ね起きて玄関に行き、訪問して来た御用聞きの前で失神した60代の女性がいた。

こうゆう事は実際に起こるのである。


救急車を呼んでもらい、幸いにも一命を取り留めて入院したが、結局原因が解らず来院。ひどい下部頚椎のカイロプラクティック的トラブルだったが、慎重にかつ丁寧に矯正して全快された。この人はカイロプラクティックを知っていて本当に良かったのである。


二度とソファーで寝そべってテレビを見たり昼寝をしないようにお願いした。

ひどい肩こりや頭痛、背部痛を訴える方々はよく聞くとほとんどの場合この悪習慣がある。

他人事では無いのである。


思い出したが、随分と前には美容師の患者さんがご自分の美容室で利用者さんを洗髪していた時に頚椎を傷めたらしく一時的に失神してしまい、慌てて私の治療室に連れてこられたこともあった。

この場合、仰向けで洗髪する際にホーローの縁に頚椎が当たった事によるトラブルであった。


頚椎のカイロプラクティック的トラブルによって、目眩だけでなく状態によってはこの様に失神する事もあるのである。



エピソード4

交通事故!

自転車に乗っていて、出会い頭に車と衝突!

2〜3メートル程跳ね飛ばされた様だが冬装束で厚着だった為か、何と擦り傷一つ無かったそうだ。

一応、救急車を呼び病院でレントゲン、脳のCTスキャン検査をしてもらったが何も異常は見当たらなかった。当然、治療も入院も処方箋も何も無しで帰宅した。


奇跡。強運。不死身。こんな言葉が周囲から聞こえてきた。


自転車はひね曲がってしまったので、事故は主には物損事故という事になり人身分の補償は幾らかしてもらって目出たく示談をした。何か凄く自分に自信がついた様でこの後の人生は前途洋々に感じたそうだ。


症状が始まったのは半年後だ。いや3ヶ月もっと前から頸の違和感や背中の痛み、軽い頭痛は始まっていたが、無視していた。自分は奇跡的に無事だったんだ。 不死身なんだと言い聞かせていた。

徐々に症状は身体中に広がっていった。低気圧が来るとひどい頭痛、頸の痛み。

背中と肩甲骨付近の痛みと胃の不調。左腕が上がらない。

昨日はゴミ捨ての時に腰にギクッと痛みが走った。


最初に行った整形外科にで症状を訴えたが、答えは何の異常もありませんという事だ。 これが交通事故の事故の後遺症なのか?だが、とっくにあれは示談している。


セカンドオピニオンと思い何軒かの病院に行った。答えは同じである。

どこもおかしく無いとのこと。


もう一度最初の病院に行って更に詳しく状況を説明したら、心療内科を紹介された。心の病いだそうだ。「それは絶対に無い!」心の中で叫んだ。自分はそうゆうタイプでは無いのだ。そこだけは何故か自信があったそうだ。


何か別の方法を探そう。そんな時に、友人から私の事を聞いて連絡をしてこられた。

ざっとこの方が来院された経緯はこんなところだ。

問診に対して憤りのうちに心の内を明かしてくれた。お気の毒何なお話である。

私の治療室に辿り着かれたのは、事故後3年程経過してからだった。


私は症状の経過やその他の問診をしてから、様々な触診を始めて検査して行くが、その間も来院に至った経緯を詳しく聞いて行く。

そもそも日本という国でカイロプラクティックの治療室に一番最初から来院する人は一握りに過ぎない。

まず、整形外科それから接骨院、マッサージ、針、整体等色々な治療に何年にも渡って通っていらした方ばかりである。

当然、積もり積もった話したいことがおありなものだ。

聞く事にしている。


加害者側の自動車保険会社、病院は結局のところ自分達のビジネスを遂行しているだけで、頼りにならない事もある。殆んどの場合、事故後直ぐにカイロプラクティックに通いたいと保険会社に頼んでも、カイロプラクティックの治療費は補償の対象にならないと言われてしまうのである。

(そのくせ自分が事故に遭うとさっさとカイロプラクティックに通うものだ。)


米国やヨーロッパなどでは、事故後整形外科で骨折や怪我がなければ、直ぐにカイロプラクティックに紹介されると聞いている。日本人はその事実を知らないのである。結局、私の治療室に来院する迄にはかなりの時間が経過していることが多い。

事故のあった経緯を聞いてゆきながら触診検査をして行くと、色々な事が重なり合って今の症状が生じている事が解ってくる。

一回の衝撃で痛めてしまう箇所は複数に及ぶものだ。

例えばレントゲン検査で右足を骨折している事が明らかになったとしても、

それだけ直せば完治しているという事にはならない。

人体は複雑な構造になっている単純ではないのだ。

丁寧に調べて、

直して行くのがカイロプラクティックというものである。

事故の程度にもよるが、大抵は5〜10回の矯正で体調を取り戻して行く事を目指して行く事になる。


今迄何人の方のお役に立って来ただろう。

この来院者も症状が回復してくるとその人の本来の表情や性格が見えてくる。

元々勝ち気で行動的な人だった様だ、始めて来院された時は痛みと不安に覆われて別人の様だった。すっかり自信を取り戻されて治療を終了となった。


「クオリティオブライフ」生活の質を取り戻されて、お帰りになる来院者を見送るのは本当に良いものである。





エピソード5

急性腰痛


人呼んでギックリ腰!(急性腰椎捻挫)


カレは誰もが恐れる悪役である。

重いものを中途半端な姿勢で持ったりした時に起きたのならまだ解るが、

何かの拍子に(朝顔を洗おうとした時。下に落ちた小さな物を拾おうとした時。くしゃみをした時など。)彼はいきなり襲いかかってくるのである。


物を持つ時は、それが重くても軽くても、正面から背中を丸めないでしっかりと膝を屈曲させて持つ事が大切である。

人は大抵は重いものは覚悟してしっかりと腰を入れて持つものだが、軽いものほど弾みで引き上げたり、身体を捻りながら持ってしまう事が多い。

体調が絶好調で相手が軽いものだと、舐めてしまうのである。


そんな時、突然にカレは来るのである。(情けはかけてはくれない)

グキ!ボキ!これが、あの噂のカレか? 

人は殆んど人生のどこかでカレに出逢うものなのである。

人によってそれが生涯たった一度の巡り合いの場合もあるが、気の毒な方は何度も出逢ってしまい頻度も増して行くものである。


患者さんの中には、数年ごとに体が見事に曲がってしまう状態で来院なさる人もいらっしゃる。場合によっては年に2〜3回という方もいた。


初めての方はあまりの衝撃的な痛みで動けずに、救急車で病院に行って

レントゲン、場合によってはCTスキャン検査をお受けになる。

結果は大抵、「良かったですね。骨には異常ありません。」

では、この痛みは何故ですか!聞いてみると

「何でもありません、死にはしませんよ。痛み止めと湿布出しておきましょうね。」

注射も、もらった痛み止めも効いた気がしないし、湿布で肌がかぶれてしまう。

散々である。救急車に乗って帰宅するまで8時間程費やしたが何一つ状況は変わっていない。

これでほとんどの場合病院に対して不信感を持つ。

それから幾つかの治療を試みてから、私の治療室に辿り着くのである。

私の治療室では、たいがいは3回〜5回カイロプラクティック矯正をすれば回復するものだ。


でも、最初に痛みが始まった時は必ずこう思う。

『原因は何だ!』 『内臓の病気から起きたのだろうか?』

そう思うものだ。後で触れるが、内臓の異常から腰痛が起こる事は稀にあるが、

それは万に一つも無いくらいの確率である。話題作りの上手なテレビ番組は人々を不安にさせるものだが、慌てる事はない。


『では、何故だ!』

ここで、はっきりとさせておく。

これは病気ではない。原因は必ず自分にある。

あまり聞きたくないとは思うが、しっかりとした状況を把握する事は今回のトラブルからの回復と再発防止に絶対に不可欠な事である。

これは急性の腰痛だけでなく全てのタイプの腰痛に関わる事だ。


原因は生活習慣である。


1)運動不足で筋力低下。(注意!筋力さえあれば腰痛にならない訳では無い。)


2)座る姿勢 椅子に座って脚を組む。床であぐら、横座り。(コタツの生活)


3)物の持ち方。斜めから膝を曲げないで持ち上げる。


4)体重の増加


こんなところである。不良姿勢が積み重なってスタンバイが出来ている状態になったならば、別に重たい物を持たなくても、わずかなつまらない事でもカレは襲って来るのである。


耳の痛いところかもしれないが、目はそらさないでもらいたい。

大切なのはありのままに真実を受け入れて、自ら改善に取り組む事である。


以前に腰痛の治療を終了した後、間もなく又腰痛が起こり以前の治療で治ってなかったとおっしゃる方がいた。

私は言った。

「ハミガキの仕方が悪くて虫歯になって、歯医者で歯を完全に治してもらっても、その後ハミガキをしないなら又直ぐに虫歯になりますよ。」


         治らなかったのは生活習慣だったのである。


起きたトラブルを治療して治す事以上に大切なのは、トラブルの原因を理解して改善に取り組んでもらう事である。


例外的に、職業的不可抗力もある事は事実である。

一例をあげると、

自衛官、警察官。消防士。介護士。保育士。建設業。コンタクトスポーツ選手。楽器の演奏家等である。この場合は致し方無いとしか言えないが、例外なく年と共に苦しみが増して行くのを感じながら現役を続けられている。

皆さんキツいのを承知で、ご自分の職業に誇りを持っていらっしゃる。

その様な方々に随分とお手伝いをさせて頂いて来た。


急性の腰痛を治す事自体は熟練したカイロプラクターにはそれ程難しい事ではないのである。


又、先に触れた内臓が原因と思われる腰痛に触れておく

その場合、それと思わせる兆候があるものである。治療していて痛みがあるべきところに全く痛みが存在しない場合が極々稀にある。カイロプラクターが触診検査をしていると解るのである。

30年以上治療に携わって来て数例だけ人間ドックを勧めた方もいらした。

幸い重大な事であったという報告は未だ無いがこうゆう事もあるのである。

兆候を掴む事は出来るのだ。


通常なら急性の腰痛、人呼んでギックリ腰は3回〜5回もあれば充分に回復させられるものだ。

只、何度でも治せるものだが、治るものだと思って何度も繰り返してほしく無い。

出来れば、あまりカレには帰って来てほしくないものである。




エピソード6

膝の痛み


スクランブル交差点で信号待ちをしていると、信号が青になった途端に皆んなが忙しそうに各々の行くべき方向に一目散に歩いて行く。

何でそんなにせっかちに歩くのだろう?


人生の殆どを電車通勤してこなかった僕が、世の中の皆んなに置いてきぼりにされているだけだという事にふと、最近気づいた。

皆さん、電車の発着時間や乗り継ぎで急がなければならないのである。


私は治療室に居る時以外は、なるべく患者を観察する様に人を見ない様にしている。出来るだけうわの空の状態を保持している。(変な誤解を避けたいからだ)

それでもどうしても目に入ってしまうほど移動の遅い人がいる。

気の毒に、膝が痛いのだ。


あれだけ不自由なのだから、きっと何らかの医療処置は受けているはずである。

治療法の選択は個人的な事なので、私は決して自分から声をかける事はしない。


適切な処置をされているのだろうか? つい、そう思ってしまうのである。


今迄、何人の方が膝の痛みでいらしただろう。

皆さん世間では常識と思われて来た事に、振り回されて来た方ばかりだった。


軟骨(半月板)は運動すると擦り減るので膝が痛む?

軟骨成分のサプリメント、膝に軟骨成分を注射すれば改善する?

ホントだろうか?

考えてみて欲しい、一般人の生活で軟骨が擦り減ってしまうなら、オリンピックや箱根駅伝を目指しているアスリートは軟骨なんて無くなってしまうのではないだろうか?ウルトラマラソンは100キロ以上走る種目もある。

では、何故膝の痛みのある患者がMRI検査を受けると半月板の縮小が観察されるのだろう?


         運動不足だからである。


関節は滑液という液体によって栄養分が供給され、老廃物が除去される仕組みとなっていて、それを循環させるには関節を動かさなければならないのだ。 

そうしていないと栄養供給不足の軟骨は萎縮してゆくのである。

動かさない事によって萎縮してしまった半月板を

動かした事で擦り減ったと説明されているのである。


       説明が逆なのである。


「サプリメントを飲んで予防しています。」と言う人はいるが、

「サプリメントを飲んで良くなりました。」と言うのはコマーシャルの中の役者さんだけだ。

病院で注射をして貰うと数日間だけ良くなると言う話も聞く。

一時的に滑液の供給不良分が補われるのかもしれないが、数日で吸収されて元に戻ってしまう。延々と半月に一度の注射が続くのである。


そうこうしているうちに、もう手術しかありませんと言われる事もある。

患者は何か画期的な方法を取ってくれて、手っ取り早くすっかり痛みから解放されると思い、大きな期待を抱いて手術を受ける。

だが、仕上がりは期待したほどでは無い。


手術後どんなことが行われたのかを聞くと、半月板を取ってしまったとのこと。

擦り減って来たので痛んでいるとの説明だったが、取ってしまっても差し支えないのだろうか?

当然、半月板はももの骨とすねの骨のクッションであるから、取ってしまえば関節は余計に不安定になる。決して調子は良くはならない。

もう走ったり出来ない人もいる。


手術が終わって次に言われる事は

「出来る事は全てしましたから、もうここで出来る事はありません。

後は運動をして体重を落として下さい。腿の筋肉を鍛えましょう。

今後は理学療法室に行って下さい。」といわれる。


それならば、何もする前から、運動せよと、鍛えよと。

最初からそう言ってくれればよかったのだ。

しかし人は自分の生活習慣の改善を指摘されるのが嫌いなものである。

それ以外の手段にすがりたがるものだ。


いったい、痛みの原因は、変形性膝関節症、軟膏が擦り減っていること?

一般世間のに伝わっている話を最初は誰が創り出したのだろう?

何かを販売したり処方したい人たちだろうか?


     この辺で真実を説明してゆく事にする。


先にも少し触れたが、膝とは骨格的にはももの骨とすねの骨の接合部の中に左右2枚ずつ軟骨が入っていてももの骨とすねの骨は靱帯で繋がっている。

その上に膝蓋骨と言う蓋がこれも靱帯によって付いていると言うものである。


しかし、人体は骨だけで形成されている訳ではない。

関節を動かす為には筋肉が必要である。

簡単に説明するとももの骨の上部からすねの骨の上部に向かって前後左右から筋肉が走行している。

それは腱から始まって紡錘形の筋肉となり、ふたたび腱となって次の骨に繋がっている。


操り人形をイメージして頂きたい。

人形が動くのは人形まで伸びている隠れた紐の仕事である。

        これが筋肉だ。

人形の機能に何か問題がある場合は観客は紐を動かしている黒子の失敗だと解るものである。

要するにそれである。脛に伸びる筋肉は腱となって膝の皿の下を抜けてすねの骨の上部の接合点に付着する。ほとんどの場合痛みはそこに出る。


本人にとっては、膝の皿の奥や内外側に痛みを感じるのである。

軟骨が減って骨と骨がぶつかっていると言われると100%信じたくなる痛み方である。(本当にそう感じるものだ。)


以外に思われるかもしれないが、打撲以外の場合ほとんどのケースは痛みのある場所に原因は無い。患部が熱を持っていてもである。


熟練したカイロプラクターは、痛みのある場所を聞くと解剖学的にそこに到達する場所のどこに問題が乗じているかがイメージ出来る。

触診で触れて直ぐに問題箇所を特定する時に、患者自体もそこが問題点である事をしっかり理解出来るのである。


信じられないかもしれないが、これは本当の事なのである。

「先生ソコデス!」と瞬間に反応されるものである。


程度によって異なるが、適切な場所に適切なアプローチをすれば膝の痛みから解放されるのである。

治ってきたら良く動かす事。スクワットなどで脚の筋肉を鍛える事に励む事で

予防出来るものである


   軟骨は膝を動かさなければ萎縮してしまうのである。


      軟骨は擦り減ることは無いのだ。


街を歩いていると足を引きずっている人を目にする事は多い。

その時にいつも、こんなの事が頭に浮かんでしまうのである。

だから、あまり人混みに行きたく無いのである。



エピソード7

胸や背中の痛み


何だか不調だ。息をすると胸や背中に痛みや違和感がある。

明らかにおかしいし、気分が悪い。

心臓か?内臓からなのだろうか?


明らかにひねってしまっていたり、ぶつけたりしていないのに?

痛みに思い当たるふしが無いなら普通なら、まず病院に相談するべきだろう。


ぶつけてしまったなら整形外科に行ったほうが良い。

肋骨をヒビ又は骨折しているのかもしれない。


両方とも検査してもらって「何でもありません。」言われたのなら、

信頼出来るカイロプラクティックに相談するのが順序だと思う。


実は内臓の問題でなく、骨折やヒビでは無いのに胸や背中に痛みが生じる事は珍しく無いものなのだ。


脊椎は頚椎7、胸椎12、腰椎5、骨盤となっている。

この中で12の胸椎は肋骨に繋がっており


1〜10の肋骨は助軟骨から胸骨に繋がって、横から観察するとバケツのハンドルの様に息を吸うと上に上がり、吐くと下がる仕組みとなっている。


11、12肋骨は前で繋がっておらず、呼吸のたびに前に少しだけ広がったり

戻ったりしている。


これ全体を胸郭と呼んでいる。

呼吸するとアコーディオンの様に動いているのである。

肋骨は丁度アコーディオンの蛇腹フィローの骨組みなのだ。

実によく出来ているのである。


胸椎12、肋骨24本。プラス鎖骨2本。合計36のパーツで出来ている事になる。


このシステムのどこかにトラブルがあれば、胸郭の中のどこかに症状が出る。

     トラブル箇所に痛みが出るとは限らない。

胸の前部の場合もあれば背後の事もある。

熟練したカイロプラクターが丁寧に調べてゆくと、特定の部分が割り出されるものである。そこに適切なベクトルの矯正が行われると患者の痛みは速やかに消失し、呼吸が楽になった事に気付くのである。


これなら歌も歌える!アコーディオンは治ったのである。


私の治療室の患者には、何人か声楽家がいらっしゃる。

彼らは痛みを感じていなくても来院する場合ある。

「最近の調子を聞くと、決まって訴える言葉がある。

それは「ここのところ歌っていて、背中の鳴りが悪いんです。」と言う言葉だ。

それで私は知ったのである。プロの声楽家の胸郭は楽器そのものだという事を。


彼らはデリケートに自分のコンディションを把握して予約をなさるのである。

治療が終わってからのお決まりのセリフはこうである。


深呼吸した後「アーこれで決まった!」である。


この機会に肋骨及び鎖骨のヒビ、骨折について触れておく。

転倒したり打撲したりして打ちどころが悪い場合、割と簡単に肋骨はヒビ又は骨折しやすいものだ。

バイクで転倒するとフルフェイスヘルメットの場合、鎖骨を骨折する事もある。


大抵は肋骨骨折の場合は、ただ湿布と痛み止め、稀にコルセットを装着する事となる。 要するにただそのまま保存するだけである。


鎖骨骨折の場合、よほど酷い場合はプレートで固定手術をするが、それ程では無い場合、骨折側の腕を1ヶ月程度固定する事になる。

この場合もプレートで固定手術をしない場合は、そのまま保存するだけとなる。


ほとんどの場合、1ヶ月程度で骨折箇所は治る場合が多い。

しかしかなりのケースで胸や背中に痛みが残ってしまうのである。


でも、「骨は付いてますので、後は日柄ものでしょう。」と言う事になる。


考えてみて欲しい。

アコーディオンを落としてしまって、それもゴロゴロと転がってしまう程だったとしよう。

蛇腹の一本が折れただけだったとして、そのパーツだけ取り替えれば次のコンサートで心置きなくステージで演奏出来るだろうか?

まして、その楽器が買い替えの効かない大切な物だったならどうですか。

貴方ならプロの楽器職人に全体の調整を依頼するのではありませんか?


その通り。 人体は楽器より緻密な作りになっている。

骨折する様なトラブルが起きた時に、骨折箇所だけ繋がればオーケーな程、雑には出来てはいないのである。


悲しい事に日本の整形学には、こんなシンプルで誰でも解る様な事実が医学のアルファベットに無いのだ。

米国やヨーロッパでは先に考えた事は当たり前の常識となっている。

       こうゆう時はカイロプラクティックに相談するのである。


どのタイミングでカイロプラクティックに相談するのがベストなのだろうか?

これは、カイロプラクターによって様々だろう。


整形外科のドクターに尋ねれば、「ヒビ、骨折があるときはカイロプラクティックなんてとんでもない!」

と言うはずである。


カイロプラクターによっては「骨が付くのに一ヶ月、それから念のために更に二ヶ月経ってからにしましょう。」と教科書通りに答えるかも知れない。


最もらしく聞こえる。

でも、忘れないで欲しい。その間も患者は、骨折箇所だけでは無く、胸や背中に痛みを感じ続けているのである。呼吸もままならず、場合によっては夜も熟睡出来ないのである。

痛みの原因は骨折だけでは無いのだ。


本当に三ヶ月後でなければカイロプラクティック矯正を受けられないのだろうか?

もっと早くに苦痛から解放される事は不可能なのだろうか?

早期の段階から力になってくれるカイロプラクターはいるのだろうか?


       答えはイエスである。


これまで考えてきたのは、ヒビ骨折がある場合、余程ピンポイントのそれも鋭い物での打撲でない限り

受傷した部位以外にも調整が必要になると言う事だった。


要するに、ヒビ骨折をしていても熟練したカイロプラクターならば、受傷部位に全く触れずに他の矯正が必要な箇所を修正する事が出来るのである。

結果はどうなるのか?

先に受傷部位以外の部分を補正すると、患者が経験している痛みの50%以上は軽減するものだ。

考えて見よう。

ヒビ骨折の場合、厳密にほんの僅かなクラックが生じてしまっている。

でもどうだろう。周辺の補正が必要な部分を先に矯正すると、そのクリアランスは限りなく少なくなるのである。  帰り際に患者はヒビ骨折は依然として存在しているにも関わらず、症状の軽減を体感するのである。

生じているヒビ骨折の予後はどうなると思われるだろうか?

             当然のことであるが、劇的な回復をする。

骨折をした人の中には、なかなか治らなかったり後からプレート手術をする人もいる。

受傷直後に安静を守らなかったと言う場合もあるが、事故の時に受賞部位以外の補正が必要な部分のダメージが大き過ぎる為に、受傷部位のクラックが大きくなってしまってなかなか回復に至らない事もある。

あるいは、骨がずれて着いてしまったと言う事も聞くが、この場合も先に受傷部位以外の補正が必要だったのだろう。


いずれにしても、常識として伝えられている事は一度は逆立ちをして眺めてみる事だ。


ただ、この場合も治療を依頼するカイロプラクターが、

熟練している事が第一条件である。


エピソード8

足首捻挫


咄嗟の動作でうかつにも足首を捻ってしまった事は誰にでもあるものである。


軽く捻っただけで難を逃れられる時もあれば、捻挫を通り越して骨折してしまうこともある。 足首を捻って起きうる事は幾つか挙げられる。


1)ぎくっと来たが、事なきを得た。

2)最初は大丈夫だと思っていたが、何となく歩き難い。(軽い捻挫)

3)凄い痛みで足が着けない。(紫色に内出血して来て足首が腫れてしまう。)

  a)完全な足首捻挫

        b)足首捻挫及びヒビ(中足骨又は腓骨遠位)

        c)足首捻挫及び骨折(中足骨又は腓骨遠位)

簡単に説明するとこんな感じとなる。


【捻挫とは何か?】


そもそも捻挫とは何だろう?お解りだろうか?

圧力がかかった状態で強く捻る事により関節が亜脱臼してしまった状態である。

簡単に言うと関節が外れてはいないが、ズレてしまっている状態である。


内出血を伴う場合もあれば、そうならない場合もある。

どこが違うのだろう?

関節各部には筋肉とそれを骨に付着させる腱、

そして骨と骨を繋いでいる靭帯というバンドの様なものがある。

大抵の場合、関節がズレる事によって骨と骨を繋いでいる靭帯が損傷して

内出血しているのである。(損傷とは引っ張られて裂けている事だ。)


【治療は固定だけ?】


骨折の無い捻挫は、簡単な固定のみの処置をする場合が多い。

2〜3週間もすれば固定を外してあとはリハビリという事になる。

この頃には内出血も僅かに跡があるだけになっている場合も多い。


しかし?固定を外して歩こうとすると違和感があり、本人にとっては

とても治ったとは実感できない場合が多い。

その後いくらリハビリをしても快適にはならないのである。


何故だろうか?

最初に捻挫の定義として圧力が掛かった状態で足首を捻ってしまい、

関節を固定していた靭帯が損傷して起きた事だと言った。

内出血を伴う場合もあればそれが起きない場合もある。


固定処置で何が改善されるのだろうか?

それは、引き伸ばされて損傷してしまった靭帯が、伸ばされつつ回復して来ただけなのである。まだ手が付けられていないトラブルがそこに潜んでいるのである。

それは日本の整形学の大の苦手分野《関節のズレ》なのだ。

これはレントゲンでは確認できないので、そんなものはない事になっているが、

それが起きなければ内出血などはしないのである。


ここまで考えて来てお解りのように、関節のズレ、

カイロプラクティック用語ではサブラクセーションと言うが、それを治す治療は全ての関節に必要が生じるものである。捻挫の場合も不可欠なのである。


簡単に言うと捻挫は最初から固定などせずに熟練したカイロプラクター

に関節可動域を修正して貰えば感じている痛みの8割は改善するものである。

(骨折を伴う場合その分の痛みは残る)

考えてみて欲しい。

ショックで関節がズレて、そこを繋いでいた靭帯が引き伸ばされてしまって

損傷しているのに、ズレた部分を修正もせずに周りを固めるのが最善の処置と本当に言えるのだろうか?

もし、固定して大事を取りたい場合でも、先に関節の調整をするのが最善と言える。 当たり前だが、そうすると損傷した靭帯の回復も驚くほど早いものだ。


誰でもほっぺたをつねられたら、早く放してもらいたいと思うものだ。

    理屈は、この位簡単なものなのである。



【何故ヒビ骨折が起こるのか?】


圧力がかかった状態で足首を捻って捻挫する。

関節がズレてしまって靭帯が損傷して内出血する。

アクシデントはここまででは済まない場合もある。


それで起こるのが、ヒビ骨折である。

実はレントゲン検査で確認できるのは骨折している場合だけで、

ヒビの場合は確認されないことも多い。


たまに聞くのは、初診でかかった病院ではレントゲンで骨折では無いと診断されたのに、その後ちょっとした事で急に酷い痛みが始まったので別の病院で検査を受けたら骨折していた。というものである。


何故、その様な事になったのだろうか?

もう、お分かりだと思うが、最初から骨にクラックが入っていたのである。

多くの場合ヒビは確認されない事が多い。

それで骨は大丈夫だと診断された後に何かのショックで割れてしまったのである。

足首だけで無く頚部大腿骨骨折でも、この様な事は稀にあるものである。


大抵はヒビ骨折の場合はギブス固定で1カ月から1カ月半もあれば骨自体は付くものである。その間、患者は指折り数えてその日を待ち侘びるのだ。

     早くこれが取れて楽になりたい。

ギブスを外してレントゲン検査をして、「さあ、すっかり治りました。」

と医師に言われてから、仕上がりが期待していたものと大きく違う事に気づく。

満足に歩く事が出来ないのだ。


「後はリハビリですね。」と言われて理学療法室に回されてからは、もう医師の顔を見ることも無くなって、どなたかの紹介で私のオフィスにたどり着いた方々は多い。  

ほとんどの方は「何でもっと早く先生の所に来なかったんだろうと言われる。」

中には「一生このままで生きて行かなくてはならなくなった。」まで仰る方もいた。

「何年前のものでも改善します。これが現実なんですよ。」私は言う。


骨折が回復してから来院する方も多いが、以前から私のオフィスに来院している方々は、もう色々な事を理解しているので酷い捻挫をすると真っ先に私のオフィスに来る。


   熟練したカイロプラクターはレントゲン検査をしなくても

ヒビ骨折は直ぐにわかるものである。時に触診は画像診断を超える事がある。


足首捻挫の関節の矯正は、骨折箇所に全く触れずに修正可能だ。

触診していて骨折やヒビの入っているところがあった場合は

矯正後に整形外科に行ってレントゲン検査をしてもらってギブス固定してもらう様に勧めている。

そうすると一ヶ月後、整形外科でギブスを外した途端に気持ちよく歩けるのだ。

担当された整形外科のドクターはさぞ誇らしかっただろう。

      患者さんからの感謝のLINEは私に届くのだ。


最後に印象的だったな症例を一つだけ挙げておく。

《70代後半の松葉杖をついた女性》

どんなに古くて酷い捻挫でも治してくれると、知人から聞いて来院された。


      話は女学生の時の事柄だった。

10代半ばの頃、バレーボールに夢中だったそうだ。

ひとり時間差攻撃!ネット脇でアタックとブロック!

自由自在だったようだ。

      そんな時だった!

色々複雑にプレーし過ぎて、つま先を伸ばしたまま斜めに着地してしまった。

      「グキ!」自分でもはっきり音が聞こえたそうだ。

全く歩けなかったので、すっかり骨折したと思った。

この方は丈夫で骨太だったのだろう、整形外科でのレントゲン検査では骨に異常なしとの事だったそうだ。

ギブス固定をされて1ヶ月後、固定を外しても腫れも引かず全く歩けなかったが、もう一度レントゲン検査をしても「骨に異常はありません。」との事。


結局、最初に病院に行った時に買われた松葉杖をそのまま着きながら生活する事になったそうである。


事故から半世紀以上経ってから、松葉杖を着きながら私のオフィスに来院された。


どんなに古い関節のトラブルでも、骨が癒着していない限り改善は出来るものだこの方は半信半疑だったと思うが、高齢になってからわざわざ来院されたのだ。

話をお聞きしながら、そのバイタリティに感心していた。

普通ならとっくに諦めているはずだからだ。


起こしたばかりの捻挫なら骨折をしていなければ3回位で完治するが、

慢性化しているため6回程矯正をした。

関節のトラブルを起こして、そのまま放置していると骨そのものが変形してくるので、関節が太くなってしまっているが可動域にかなりの改善がみられた。


3回目の矯正以来、松葉杖はいらなくなったそうだ。

「良かったですね。もう大丈夫ですので、これで様子を見ましょう。」


僕は来院者にこの言葉をかけて、後ろ姿を見送るのが大好きなのである。

日本では法整備が出来ていないので、色々偏見の眼で見られる職業だが、

やって来て良かった。とこんな時に思うのである。